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癒されたいと思うかぎり癒されない

2005.12.30 Friday | 癒される本

 今、「癒しブーム」と言われる。むなしさやストレスが原因となって、目に見えない疲労が蓄積されている。それを何とかしたいという渇きにも似た願望が、現代人にはあるようだ。

 けれど注意が必要なのは、「癒されたい」「私を癒してほしい」という衝動に駆られているうちは、おそらくほんとうに「癒される」ことなどないということだ。
 フランクルによれば、ほんとうの「癒し」は、自分のことを必要とする「何か」や「誰か」とのかかわりの中で、はじめて可能になるものである。

 自分のことを必要としている誰かのために、自分にできることをする。自分の都合のためにでなく、相手をそのままで大切にする。愛する。

 そうしていく中で、人の心ははじめて、かつひとりでに癒されていく。

木を植えた男
『木を植えた男』という話がある(ジョン・ジオノ作)。妻と息子に先立たれ、一人とり残された初老の男が、三〇年以上、荒れ地にひたすら木を植え続けていく話である。

 この老人には、傷ついたのは自分だけではない、この大地も傷ついているという自覚があった。だからひたすら木を植え続けた。名誉も報酬も関係なく。すると大地と共に、傷ついた彼の心も癒されていったのである。この話はフランクルの考えに通じるものがある。

 俺はこんなに傷ついた、孤独だ苦しいんだと言ってみても始まらない。

 他の誰かや何かのために、自分にできることをする。なすべきことをなしていく。その中で人の心はほんとうに癒されていくという「癒しの逆説的な真理」がある。

 最近、ボランティア志望の人が増えているという。人々が心のどこかで、この癒しの逆説を感じ取り始めているのだろう。

(諸富祥彦著『むなしさの心理学』より)
「むなしさ」の心理学―なぜ満たされないのか
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諸富 祥彦(著)
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木を植えた男
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ジャン ジオノ(著), 寺岡 襄(翻訳)
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